結論
いきなり結論を申しますと、クロスボウの射撃場として認められる条件がかなり厳しいためです。
クロスボウの射撃場として認められる条件は警察で出している『取扱読本』や「クロスボウの所持に関する法令」に書かれています。
簡単に書きますと、射撃者から射線を中心に左右10度の扇形で、使用する矢の最大到達距離を半径とするエリアが危険区域となり、このエリアを確保する必要があります。
さらに危険区域周辺は関係者以外が立ち入らない様にする必要があり、また標的の後ろにバックストップ(矢がそれ以上行かないようにする壁のようなもの)が必須となります。
………文章にするといまいちピンときませんね。
つまり、左右100m奥行き300mのエリアを確保した上でその周囲に人が立ち入らない施策を施す必要があります。
3ヘクタール以上の誰も立ち入らない、さらに上空に電線などがない土地です。
大地主でない限り事実上、無理です。
従来の射撃場が使えない
銃の射撃場は各地に点在しており、愛知県にも少なくとも3箇所の、岐阜県にも2箇所の射撃場があります。ところが5箇所ともクロスボウの射撃が行えません。
理由はいろいろありますが、一番大きな理由は「前述の条件を満たす射撃場ではない」ためです。
FBUがそれぞれの射撃場に問い合わせを行いましたが、どこもよい返答は得られませんでした。
例えばある県営射撃場は端からクロスボウは考えていないという返答でしたし、ある市営射撃場は地元警察署に問い合わせまでしてくださいましたが、警察からダメと言われたという返答でした。
銃が撃てる場所なのにクロスボウは撃てないというのはおかしな話だと思いますが、これが現在の状況です。
なお法規制前は(クロスボウの射撃を許可していた)アーチェリー場や周りに何もない山林、河川敷でも安全が確保できれば使用する事ができました。
当然今はこれらの場所では射撃できません。
時折「射撃場ではなくアーチェリー場を探した方がよいのでは?」「アーチェリー場と交渉したらダメなのか?」と聞かれる方がいらっしゃいます。
答えはノー、です。
確かに以前はごく一部でクロスボウの射撃ができるアーチェリー場がありました。
しかし法律によってクロスボウはアーチェリーなどの洋弓から銃刀の扱いに変わってしまったため、とてもではありませんがアーチェリー場の基準ではクロスボウは撃てないのです。
その厳しさはもう、アーチェリー場を少し改修すれば…というレベルではありません。
ですのでアーチェリー場ではなく射撃場を探しているのです。
厳しい条件を緩和するためには?
前述の条件では射撃場を設置することは事実上できませんが、実は条件緩和策があります。
1つは、洞穴の様に天地左右が囲われている場所であれば、危険区域がそのエリア内に限定されるため、そこで射撃することが可能となります。
もう1つは、クロスボウ射撃指導員がそこにいればバックストップから後ろは危険区域から外れるため、射撃できる可能性が広がります。
ところが、この条件を緩和するにもいろいろ問題があります。
前者の洞穴にする方法が一番現実的ですが、土木工事が必要となりますのでコストがかなりかかります。
後者についてはそもそも射撃指導員になれる条件がかなり厳しく、関係者から教えていただいた情報では2022年7月現在で全日本クロスボウ協会の会員はほぼ0人、日本ボウガン射撃協会の会員でも数名しかこの指導員の許可は得られていません。
FBU幹事も警察に指導員になるための相談をしましたが、「そもそも指導する相手がいるのですか?」と言われてしまいました。
新規競技者が見込めない今、指導対象者の確保もかなり厳しいと言わざるを得ません。
射撃場を設けるには競技者人口を増やさなければならない(数人の競技者のために射撃場を整備するのは割に合いません)、しかし競技者人口を増やすためにはまず射撃場がなければ話にならない。
堂々巡りになってしまいます。
これが現在の状況です。既存の射撃場が使用できない以上、新規で条件にあう射撃場を設けなければいけません。
法律で禁止された種目
余談ですが、銃刀法によって事実上出来なくなった種目があります。
それは「フィールド」です。
フィールドは山林に点在する射撃ポイントから的を当てる競技ですが、アーチェリーはもちろん、クロスボウにもそれはありました。
しかし銃刀法によって射撃場の条件が厳しく定められたため、フィールド競技は事実上禁止となりました。
これも残念ではあります…